プライマリーキス 番外編&溺愛シリーズ
 帰宅してから僕は、美羽を求めた。
 会社では側にいても彼女を自分のもののようには振る舞えない。
 ありったけの愛を注ぐことを許されるのは、新居のここだけだ。
 来春には、松濤に新しい家が建つ。ぼんやりと彼女と二人の未来を描いていた。

「……待って。ゆっくり……」
「美羽……具合悪い?」

「大丈夫。でも……ドキドキしてて。この頃、疲れてるのかな、いつもそうなの。ちょっと熱っぽかったかも」
「休もう。おいで。無理しなくていいって言ったのに、君は……」

 美羽の様子が明らかにおかしかったので、僕は不意にあることがよぎった。

 毎回フライングしてしまうので検査をすることをしないようにする、と美羽は言っていたが……。

「もしかして」と二人で顔を見合わせて、美羽の腹部へそっと触れる。

「でも、また間違いだったら、がっかりするでしょ?」

「がっかりなんてしないよ。そうじゃなければ安心して君を抱ける。もしそうだったら何倍も嬉しい気持ちになるだけだ」

「本当に?」
 窺うように、彼女の瞳が揺れる。
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