プライマリーキス 番外編&溺愛シリーズ
 病院の検査を終えた後で、7週目に入っていることが分かった。

 今の医療の進歩は素晴らしく、白黒のエコーだけではなく3Dや4Dといって内部の状態をはっきりと知ることが出来るようだ。

 まだ形ははっきりと見えないが、確かにそこには命の姿があった。
 共に喜びを分かち合った時、僕は美羽のその時の表情を忘れることは出来ない。

 本社に戻って会議を終えたあと、僕の上機嫌を悟ったのだろう、市ヶ谷副社長がニヤついた顔でひっそりと声をかけてきた。

「……ようやくおめでた、だそうで」

「公表していないことを、喋られると困りますよ。また妙な騒ぎになるのは避けたい。彼女を守る責任があるんですから」

 僕が牽制の意味で言うと、彼は肩を竦めた。

「当然。こちらも弱味を握られてるわけですし。京都へ行った甲斐があったんじゃないか、っていうことですよ、社長」

 市ヶ谷副社長は言って、彼の秘書と共にエレベーターへと向かった。

 確かに、美羽も同じことを言いそうだな、と彼女の笑顔を思い浮かべる。

 僕の内ポケットの中には、医師がくれたエコー画像のうちの一部が入っている。
 喜びはまた帰ってから、彼女と一緒に分かち合いたい。

 誰にも見られることなく、とがめられることもなく、二人きりで。
 
 午後に新しいカタログのサンプルを眺めながら、美羽とお腹の子のことを想った。

 
 
< 129 / 137 >

この作品をシェア

pagetop