プライマリーキス 番外編&溺愛シリーズ
「もうすぐ、ウィルも眠りそうだから、そしたら一緒に……」
「慣れない場所にきた猫が、夜泣きでもしたら?」

「そしたら、ちゃんと付き添いますよ」
「睡眠の邪魔になるだろう」

「潤哉さんから離れてお世話します」
「そうじゃない。君が身体を壊したらどうする? 休暇の後は、出張が多く入ってるんだ。分かるだろう?」

「ズルいです。そういう時だけ、上司の顔をする」

 だんだん私も譲れなくなってきて、潤哉さんをじっと見つめ返すと、ウィルも同じようにそうしていたらしく、潤哉さんは一人悪者にになってしまったのが悔しかったようだ、やれやれと肩を竦めた。

「シャワーを浴びて寝るよ。君はウィルと楽しい夜を過ごせばいいさ」

 子供みたいなことを言っているの、彼は分かっているのかな?

 背中がちょっと寂しそうだったのがおかしくなって、私はウィルの鼻にしーっと指をくっつけて離れると、彼の背中に抱きついた。

「潤哉さん」
「……別に、怒ってるわけじゃないよ」

「一番大好きなのは潤哉さんなんだから、少しだけお預けさせてください。いつも私にそうするでしょ? イジワルなこと」

 潤哉さんはくるりと振り返り、私を見下ろすと、力強い腕でひょいっと抱え上げた。

「きゃっ」
「君がウィルを可愛がるのは自由。だったら、僕が君をいくら可愛がっても自由。そういうことだね?」

 彼の甘く滲んだ瞳が、私を捕らえて離さない。鼻先にキスをして、唇にキスをして、ぎゅっと抱きしめた。



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