プライマリーキス 番外編&溺愛シリーズ
「美羽?」
 声をかけられてドキッとした。
「なんでもないです」

「ヘンだよ、今朝からの君」
「潤哉さんのせい」
「どうして?」
「誘導尋問は禁止」
「意味が分からないな」

 潤哉さんは笑って、私の手を繋いだ。
 片方にはウィルの入っているバスケット。

 もしも二人の間に、赤ちゃんが出来たら……ベビーカーを押したりして、こうしているのかな?

 すぐに欲しいっていう訳じゃないけど、なんだか周りから言われると、あれこれ考えてしまう。

 潤哉さんは試すように、私を煽ってくるし。

 帰りは、ブラックキャブに乗って自宅に向かった。

 夕食を済ませたあと、私はすっかり忘れかけていたのに、ソファで二人並んでシャンパンで乾杯していると、
「それで?」と、追及してきた。

 ウィルはというと、とっくにすやすやと眠っていて……誤魔化すことは出来ない。

 なんだか今夜もイジワルな感じがする。私はシャンパンの残りを飲み干して、彼を見つめた。

「……やっぱり、言えない」
「だから、何が?」
 彼はグラスを取りあげて、私を膝の上に乗せる。

 そうやって見つめられたら、ますます言えないよ。
 身体だけが妙に熱くなっていくばかりで。


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