プライマリーキス 番外編&溺愛シリーズ
「出来るだけ側にいたいから、ぎりぎりまで働けたらいいなって思ってるよ。その時は、だけど」

「また食事にでも行こうよ」
「うん」

「あ、今度こそ、旦那さんがやきもち妬かないといいけどね。社長夫人を誘うのも一苦労だな」

 いつだったかのカフェでのことを思い返して、二人して笑った。

 私はそれから秘書課へ戻って、森重室長の元へ訪ねた。相変わらず淡々とした様子なのは変わらないけれど、なんだか前よりもおだやかになったように見える。

「なんです。じろじろと」
「いえ。幸せそうだなって。久美ちゃんは元気ですか?」
「君に早く会いたいと言っていました。良かったら新居の方に」

「あ、そうですよね。マンション出て新築するとか……」
「君は、マンションの方だったかな」
「はい。松濤のお家は、色々あったから残念だけど……」

「その方がいいでしょう。新婚を楽しんでください。仕事に差し支えないように」
「はい」

 飴と鞭はいつもの通り。ここに戻ってこれた今が私はとても嬉しかったのだけれど。

「早速ですが、実は市ヶ谷副社長から特別で君に、接待同行をお願いしたいということだったんですが……」

 森重室長の眼鏡の奥を見て、私は動揺を隠しきれない。

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