天使の舞―前編―【完】
「ねぇシラサギさん。
窓の外を、見せてもらえませんか?
悠くんを見たいの…。」


却下を覚悟で、弱々しく乃莉子は聞いてみた。


「天界の王子の事は、お忘れ下さいと言ったはずです。
それに、かの王子の御名はキャスパトレイユ様でなければいけません。
あなた様は、魔界の王子のお妃様になるのですから。」


眉をしかめて、シラサギは乃莉子を諌めた。


やっぱりなと思ったが、乃莉子だってここであっさり引き下がる訳にはいかない。


だって、ここは魔界。


天界の、しかも王子を名乗る者が、単身ここへ来ているのだ。


たぶん、乃莉子を助けるために、危険を承知で。


そんな悠…いや、キャスパトレイユが、気にならない訳がない。

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