天使の舞―前編―【完】
無意識に、乃莉子の口からこぼれた言葉。


「帰りたいなぁ。」


ごく自然な言葉であった。


私ここで、何してるんだろ…。

私どうして、進んで名前の契約なんかしちゃったんだろ…。


そんな思いが、ふつふつと沸いてきた。


何故なら、先ほどのシンシアの台詞が、ぐるぐると乃莉子の頭の中を回っているからだ。


考えないようにと思っても、どうしても気になってしまう。


無造作に乃莉子は寝返って、ため息をついた。


「やだ・・・私、どうしちゃったんだろ・・・。
何でこんなにキャスの事、気になるのよ・・・。
何だか苦しい・・・。」


芽生え始めた、小さな恋の種は、着実に乃莉子の中で成長しているようあった。


< 209 / 230 >

この作品をシェア

pagetop