天使の舞―前編―【完】
嫌々ながらも王の間に到着してしまった、キャスパトレイユ。

煌めく、色とりどりの宝石が散りばめられた豪奢な扉が、待っていましたと言わんばかりに、解放された。


扉を開けたのは、天界の王、天王ウェルザの側近、シュカであった。


シュカはキャスパトレイユに一礼すると、導くように先に部屋の中を進む。


「到着までに、お時間がかかりましたな王子。
天王がお待ちかねでございますぞ。」


たくましい体に、たくましい声の側近は、振り向くことなく、柔和な表情でキャスに話しかけた。


「どうせ、人間界行きの話なんだろ?
覇王とか、覇権とか、面倒くせぇよ。
俺、覇王になんかなりたくないし、全然興味ない。」


「それでキャスパトレイユ様は今まで、たくさんの女性達と手当たり次第に、お付き合いをなさっておられたのですかな?」


「失礼な言い方するなよ。
わざわざ覇権ごときのために、人間界に出向いてまで、妃探しをしたくねぇんだよ。
妃なら、天界の娘でもいいじゃんか。
すっげ~面倒くせぇ。
俺、覇権なんてマジ、いらないんだけど!」


キャスパトレイユは、語尾を強めてシュカに八つ当たりした。
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