天使の舞―前編―【完】
ただ違っていたのは、球体の中に入っている、羽の色。


今日のは、黒い。


『また、目の前で割れたら厄介だわ。
早く立ち去るに限るわね。』


乃莉子は心の中で呟いて、この場を離れる事にした。


でも…。


割れてしまった。


乃莉子は“ポン”という音に、気づかないフリを決め込んで、立ち止まらずに歩みを進めた。


そんな乃莉子の背中越しに、甘く低い声が掛かる。


「おい…堂々と無視するな。」

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