ラッキービーンズ【番外編】
雑念を追い出したくてひたすら皿洗いに集中した。


水嶋がいつ寝室から出てくるのかとか、気にしない。見に行かない。

片づけが終わったらリビングに行って普通の顔できるはず。


「メイちゃーん、日本酒とかないの?」

「えー、そこの上の棚に入ってない?」


無心に皿を洗っていたから、後ろから八木原くんに声をかけられた時も、振り向きもせずに、即答してしまった。


「……ふぅん」


八木原くんの意味ありげな口調にハッと我に返って手が止まる。


しまった……。


「メイちゃん詳しいんだねー」

「さ、さっきお鍋しまおうとして間違えて開けちゃったんだよねー、あは」

「こんな上の棚を? メイちゃんよく届いたね」

「……」


もうダメだ。

完全にバレてる。


そう悟って口をぎゅっと結んで黙ると、八木原くんはおどけた口調で謝ってきた。


「ごめん、ごめん。イジメすぎちゃった?」



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