ラッキービーンズ【番外編】
「で、ヤギは?」

「えと、帰りました……」


やましいことなんてないのにな。

それを水嶋に伝えたいけれど、リアちゃんがいる手前、そんな言い訳も口にできない。


「メイさんは?」

「えっ? 私っ……!?」


意味が分からなくてビックリしてリアちゃんを見ると、ニコニコとした微笑みの中に何か言いたげな雰囲気。

そっか、普通ならここは協力して私も帰るところだってことか。


「ご、ごめん。バッグとかコートとか全部ここに置いてっちゃって……」


て何、私謝ってるんだろう。

バッグとコートがあったら帰ったのかよって自分に突っ込みたい。


「メイさんて意外に忘れんぼなんですねー」

「はは……」


私の乾いた笑いを最後に場がシラっとした空気になる。

ああ、何この居心地の悪さ。


まるで私が邪魔ものみたいだ……ってリアちゃんの中ではそうなんだろうけど。

さて、この雰囲気をどうしようかと目をきょろきょろさせていると、業を煮やしたのか、リアちゃんが大きく伸びをしながら口を開いた。


「あーあ、帰るのダルいからこのまま泊まってっちゃおうかなー。ね、メイさん」

「えっ。ダ、ダメだよ! それはダメッ!!」
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