渇望の鬼、欺く狐
#07 鬼の願い
***



「母ちゃん! 見て見て! 雪がとんぼ捕まえてくれた!」


「良かったね」



 月日は流れた。

 旭は三歳を迎えて、走る事も跳ねる事も上手になって。

 今では、しっかりと会話も成り立つ程。

 すくすくと育った旭は、本当に元気に健康に大きくなってくれて。



「雪、俺も捕まえるー」


「お前にはまだ無理だって」


「大丈夫なの! 捕まえるの!」



 多少、元気が有り余っている感が否めないが、健康ならそれで良いのかもしれない。

 自分の事は「僕」と呼ばせるつもりではいたけれど、近くに居る雪が「俺」と言うのだから、それも仕方無い事なのだろう。

 話し方まで、少し似てしまった気もするけれど。



「よし、いくよー! えい! ……あ」


「ほら見ろ」



 やはり元気なのだから、それで十分だ。

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