渇望の鬼、欺く狐
#06 狐
***



 賑やかに活気付いた人の波。

 人間たちは、今日も商売に精を出している。

 狐の耳と四本の尻尾を隠し、完全に人の姿を取った狐は、その町中を砂利の音を引き摺らせて歩いていた。

 昨晩、鬼と赤子と共に横になりながら、やはり眠る事は出来なかった。

 きっと普段なら眠る事は可能だったろうに、昨晩はどうにも眠気を阻害する思考が狐の中を渦巻いていた。

 朝になり鬼に買出しを頼まれて、了承した狐。

 完全に人と化した狐を怪しむ者など、誰一人居ない。

 それどころか。



「ご主人」


「あぁ、旦那。来て下さったんですか」


「あぁ。何か良いのある?」



 鬼に贈るかんざしを何度も選んでいた事で、いつの間にか店の主人とは顔見知りにまでなってしまった始末。

 そんなやりとりすらも、狐はどこか楽しそうに繰り広げている。



「こんなのはいかがです? 人気ありますよ」



 店の奥から出されたそれは、銀製のかんざしで先には銀細工が施されてあった。

 そのかんざしを鬼が付けている光景を想像した狐は、店の主人へと口を開く。

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