月夜の翡翠と貴方


いや、それどころか、男達との戦闘後の馬車の空気は、最悪だった。

異様に、ルトが不機嫌だったのである。

お陰で、恐怖を隠しきれないリロザはひとまずとして、私とミラゼは少し気まずい思いをしていたのだ。

今こそ、普通に笑っているが。

それにしても。


「……………………」


じっと、彼を見つめる。

しかし、気づいているだろうにこちらを見もせず、彼はフォークにハンバーグの一切れを刺した。

…やっぱり。

正面の席だというのに、ルトと全く目が合わない。

完全に、私の存在を無視している。

…まだ、怒っているのか。

溜息をつきそうになる。


食事が終わっても、ルトは何も言わず部屋へ戻ってしまった。

私とルトの、ふたり部屋。

正直、部屋へ行きにくいのだが。


「ジェイドちゃん」

振り返ると、ミラゼが心配そうにこちらを見ていた。

「木箱の見張り、私とルトで交代ですることになったの。今から深夜まで私の番だから、一緒に見張らない?」

つまりは、一緒にいようか、ということ…と受け取っていいのだろうか。


< 314 / 710 >

この作品をシェア

pagetop