月夜の翡翠と貴方


ルトの明らかにこのあいだの夜の事を忘れていた、という様子に、リロザがカップを片手に文句を言い始めた。

「ルト。お前、この私に担がせたことを忘れるなよ。もう酒は飲むな」

「はいはい。その節はどーもお世話になりまして」

面倒そうに返事をするルトに、リロザが眉をつりあげる。

「言っておくが、あの夜いちばん迷惑だったのはジェイドさんだからな」

リロザの言葉に、ルトが「ん」と返事をして、隣の席に座る私に視線を寄越した。

「ごめん」と私にしか聞こえないような声で謝罪する。

しかし、さすがに一滴たりとも酒を飲むなとは言えない。

「よ…酔い潰れない程度にしてくれたらいいよ。宿に自分の足で戻ってくれたら」

そう言うと、カウンターに座るリロザが「ジェイドさんがそうやって甘やかすから」と唇を尖らせた。

すると、リロザの隣に座っている男が、私とルトを見て笑った。

「ホント、あの夜ジェイドさんすげー困ってたぞ。俺もそうだけど、男はみんな酔ってたからなぁ」

「………そんなに?」


カップに口つけたルトが、半ば笑いながら眉を寄せてこちらを見る。


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