月夜の翡翠と貴方

ルトも、突然の私の言葉に、驚いている。

私が、こんなことを言うのはおかしいとわかっているけれど。

.....それでも。


「…今、金なら邸から持ってくる、と仰いましたね」


セルシアは益々眉を寄せる。

「…だから、なんだというんですか」

私は、セルシアを真っ直ぐに見つめた。


「…その金は、何処から出てきたものだと思いますか?」


本当は、こんなことは言いたくない。

頭が小さく痛み出す。

思い出すことに、なるでしょう。

思い知らされて、しまうでしょう。

よくある貴族令嬢の悩みなど、放っておけばいいものを。


どうやら私は、ルトのお人好しがうつってしまったらしい。


セルシアは訝しげにこちらをみると、小さく質問の返事をした。


「何処からって…家からよ。オリザーヌの金だもの」


予想していた答えに、溜息をつきそうになるのを堪えて、強い声を出した。


「…それは、違います」

「どうして?」


仕方ないのだ。

貴族は、自分の尺でしか物事の価値をはかれない。


私が、そうだったから。


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