月夜の翡翠と貴方


結局、私にとってこの男は『ルト』であり、それ以外は信じないのだから。


ルトが、私をぎゅう、と抱きしめる。

「…多分俺、ジェイドいなくなったら、つまらなすぎて死ぬから」

「…そう。私は……ルトがいなきゃ、生きていけないと思う」

これは真実であり、そのままの事実である。

まず金もなければ、住むところもなく。

きっと奴隷屋に売られない限り、生きていくことさえ出来なくなるだろう。


それを伝えると、ルトは何故か嬉しそうに笑った。

「じゃあジェイドは、一生俺から離れられないね?」

「…そうだね」

たとえ金や住むところがあっても、ルトがいなければ、私はまともに生きていけないだろうと、思う。

安定した精神で、いられない。


< 703 / 710 >

この作品をシェア

pagetop