淫靡な蒼い月
茨
レースがたくさんあしらわれた、純白のドレス。
それに身を包んだ彼女は、とても美しい。
しかし、僕の瞳は、そんな彼女の傍らに寄り添う、彼女のお姉さんを、見ている。
今日から、僕自身の“義姉”とも、なってしまうんだね。
昨夜、今日の準備に忙しい最中に僕は貴方を呼び出し、必死に抵抗する貴方を、組み敷いた。
貴方の、白くて華奢な肩は、彼女と同じ。
淡いピンクのスーツにしっかりと隠されたその肩には、昨夜の僕の歯形が、残っているよね。
その美しい胸元には、紅く唇の痕も、あるよね?
スカートの中の白い、その脚の内側にも
鎖骨の下にも
背中、
腰
脇
見えない場所の至るところに、僕の痕跡を、強く、強く、残した。
もう、一生、消えなきゃいいのに。
永遠に、残せたらいいのに。
貴方の側にいたいから、僕は今日、彼女と結婚するんだよ。
貴方の側にいるために。
彼女が、美しい笑みで控え室を出ていく。
僕も、もう行かなくては。
彼女が部屋を出た途端、ふわりと、腕に何かが絡み引き寄せられる。
驚いた唇に、昨夜と同じルージュの甘い温もりが、伝わってくる。
ああ……。
甘い、貴方の唇。
うっとりとした瞬間、心臓に鋭い痛みが走った。
視界が歪み、甘い唇が、離れてゆく。
「あなたが、いけないのよ……」
遠退く意識の中、僕が最期に視たのは、淡いピンクのスーツを深紅の茨に染めた、貴方の、美しい笑顔だった……。