クランベールの甘い日々 〜クランベールに行ってきます 番外編集〜
 首筋やうなじの髪をかき上げられ、結衣がピクピク反応するたびに、ロイドはおもしろそうにクスクス笑う。

 気を紛らわせるために、結衣はロイドに話しかけた。


「ねぇ。王子様が、ああいう性格だって知ってた?」
「あぁ。ご幼少の頃からそうだったな。おもしろいだろう?」


 なるほど、と納得する。
 どうもロイドの判断基準は、何につけても、おもしろいかどうかのようだ。


「じゃあ、あなたはどうして王様やエライ人たちの前だと、態度が豹変するの?」

「そんなの当たり前だろう。だが、強いて言うなら、陛下や殿下のネックにならないため、かな?」

「どういう事?」

「オレはお二人が何をやるのか、側で見ていたいだけだが、どこの馬の骨ともつかないオレを、側に置くだけで気に入らない輩もいる。オレが礼儀知らずだったり素行が悪かったりしたら、何かあった時、陛下や殿下の失脚を目論む口実にされかねない。そんな事で動じるような方々じゃないとは思うが、わざわざ種を蒔く必要もない。お二人が親しく接して下さる事は嬉しく思うが、オレの方からは、なれなれしくしないように心がけている。おまえはもう殿下じゃないんだ。今後はオレと無関係でない以上、殿下にタメ口きいたりするな」

「うん……」

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