クランベールの甘い日々 〜クランベールに行ってきます 番外編集〜
 若者たちは慌てて、店の奥に引っ込んだ。


「ったく、ヒマな奴らだ」


 吐き捨てるように言うと、ロイドは結衣の手を掴んだ。


「行くぞ」
「うん」


 手を握って歩き始めたロイドに、結衣は素直に従う。

 こんな風に男と手を繋いで歩くのは、小学校一年生の遠足の時以来、初めてのような気がする。

 手を繋いで歩いているだけで、じわじわとデートの実感が湧いてきて、今さらのようにドキドキしてきた。

 少し歩いたところで、腕時計にチラリと視線をくれて、ロイドが立ち止まった。


「おまえ、腹減ってるか?」
「ううん。それほどでも」

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