六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
指先でそっと、その唇に触れてみた。
ふにふにと柔らかいそれは、本当にあたしの感触なのか……。
バカ……。
バカだ。
あたし、本物のバカだ。
太一やオーリィの警告は、何の歯止めにもならなかった。
絶対、報われない。
傷つくだけ。
幸せな結末なんか、どこにもないはずなのに。
どうしてこの恋に、気づいてしまったんだろう。
「…………」
あたしは自分のベッドにぬくもりを残していった彼の名を、小さく呼んだ。
「……ごめんなさい」
皆、ごめんなさい。
結ばれようだなんて思わないから。
せめて。
この夏の間だけでも、彼を好きでいる事を。
どうか、許して下さい。