六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】


夜中に留衣さんの家を出て、

東京に着く頃には空が紫色になっていた。


日が昇る……。


大きなワゴン車から窓の外を見る。


太一と瑛さんは昼間疲れていたようで、すやすやと眠っていた。


あたしは……。


怖い夢を見るのが嫌で、一睡もできなかった。


清良……。


大丈夫だろうか。

ひどい事をされていないだろうか。


どうして……一人にしたんだろう。


一緒にいたとしても、何もできなかったかもしれないけど……。




敵は、結界の隙間を切り裂き、

一瞬で清良をさらって行ったらしい。


結界が破壊された事をすぐに感知した留衣さんも、

追い付けないほどの速さで……。


果たして……そんな敵に、あたしは勝てるのだろうか。



「……起きてたのか」


隣の座席からクセのある声がして、慌ててカーテンを閉める。


「すみません、起こしちゃいましたか」


「いや……」

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