六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】


気づけば、祈っていた。



(勝って……)



残り少ない力が、放出されていく。


それに気づいて、太一が肩をたたいた。


「姉ちゃん、もう無理だって!」


それでもあたしはやめなかった。


彼のために、祈る事を。



(瑛さんに、力を!


この戦いに決着を付ける、新しい力を!


紫の炎よ、どうか彼を守って!!)



「無駄だ!!」


巻き上がる炎の中に、伊奈が鞭を振り上げ、飛び込む。



その先が、瑛さんの手首を捕らえようとする。



(お願い、お願い!)



思わず目を閉じ、必死に祈る。



すると、炎の中から声が聞こえた。



「……これで、どうする?

お前の武器は封じられた」



ハッと目を開けると、全てのものを切り裂くほど鋭い鞭を、

瑛さんが自らの手首に巻き付けているのが見えた。



それは皮膚に食い込み、ボタボタと血が流れている。


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