六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
顔を手で覆っていると、部屋のふすまの向こうから声がかけられた。
「姉ちゃん!叫び声が聞こえたけど大丈夫か!?」
男の子にしては、少し高めの声。
1つ下の弟、太一(たいち)の声だ。
「あっ、だ、大丈夫……!寝ぼけただけ!」
「何だよぉ。起こされて心配までして、損したー」
そう言うと、廊下を自分の部屋の方へ歩いていく太一の足音が聞こえた。
「はぁ……」
顔の前にあった手をどけたついでに、時計を見た。
ちょうど、いつも起きる時間だ。
あたしは胸をなでおろす。
あのリアルな夢の中で、すごく長い時間を過ごしていた気がしたから。
寝過ごしたように……頭がぼんやりしてる。
とにかく布団から起きて、いつものように制服に着替えて。
家族がいる居間へ向かった。