六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】




「……ありがとう」



そう呟くと……。



涙で濡れた手で、あたしの顔をそっと包んで。



彼の唇が、あたしの唇に触れた。



夢のように、優しく、触れた。



何度も……。



あたしは何故か、それを自然に受け入れていた。



痛みも悲しみも恥じらいも、どこかへいってしまって。



ただ、お互いのぬくもりを共有する行為に没頭した。



最後に。



「……許してくれ」



麻痺した頭の隅に聞こえた言葉が。



そのキスに対するものなのか。



他のことに対するものなのか。



あたしには、わからなかった。



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