六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】


朝日が、射し込む。



ひぐらしはいつの間にか、鳴く事をやめていた。



代わりに、鳥の鳴き声が聞こえる。






まぶたを、そっと開ける。



おそるおそる。



見えたのは……。



白。


だけ。



あの愛しい紫色は、どこにも見えない。





あぁ……。



わかっていた。



けど。



やはり、貴方がいない。



布団には、あたしただ一人。



彼は……。



あたしの胸に散らされた、口づけの花弁以外は。



におい1つ残さず、姿を消した。



わかってた……。



さよならは、言わないと。



それに、

できるかわからない再会の約束は、してくれないと。



真面目で、不器用な貴方は。



絶対……不確かな約束はしない。



そういうところが、大好きだけど、大嫌い。






あたしは、

薄い夏布団の中で、一人でしばらく泣いた。







そうして――。






あたしの初めての恋は、終わった。







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