六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
都内某所……
「うん、うん……
ちょっとゴメン、今忙しくて……
え、何?
わかってる、お正月には帰るから!」
乱暴に切った電話を、テーブルに放り投げる。
あたしは、今では立派な(?)会社員。
明日は重要な仕事があるのに、雨が降りそうでイラついていた。
洗い流さないトリートメントを、相変わらず長い髪に付けたところで、
手がベタベタなのに。
太一から、のんびりした電話がかかってきて、さらにイラついた。
「何よ!姉の友達とデキ婚しといて、
『姉ちゃん、まだなの~?』だって!
ムカつく!」
誰も返事をしない部屋で、独り言を言うのも無意識だった。
「はぁ……」
まぁ、なるようになるでしょ。
それが今のあたしの口癖。
高校を卒業し、こっちで就職して……。
いくつか恋をすれども、ゴールインには程遠い。