六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
生きている人間相手ではないとはいえ、
やはりその光景は衝撃的で。
あたし達は誰も言葉を発する事ができない。
炎の勢いで、岡崎さんの銀髪が揺れる。
「……姿を現せ」
そう言うと、岡崎さんは小さな声で何事かつぶやいた。
太一の真言と同じようなものだろうか。
『う、あああ……』
炎の中の式神がうなり、その姿を変えはじめた。
「あっ!」
姿を変えた式神から、岡崎さんが手を離す。
その姿は、前に一度見たことのある人だった。
そう、あの雨の誕生日。
車の助手席に乗っていた、
メガネをかけた優しそうな男の人だった。
炎の中、岡崎さんとその男の人が立ち上がる。
「なにあれ……」
それまでとは全く違う式神の様子に、あたし達は言葉を失った。