届カナイ愛ト知ッテイタノニ抑エキレズニ愛シ続ケタ…

41 僕はここにいる


綾瀬唯としてのあたしの誕生記念パーティは、終始ボーッとしていた。

頭の中は霧生くんの事で一杯だもん。

生きているだけでも奇跡って思っていたのに。

まさか、会えるなんて思ってもいなかったから。

鼓動はフル稼働しているのに。

体の芯は緊張で張りつめている。

あのコンビニのお兄さんみたいに、怒鳴られるかもしれない。

だけど早く会いたくて、いろいろ聞きたくて仕方なかった。

あの後、どこで何していたの?

どうして居なくなってしまったの?

今は何をしているの?

彼女は?

質問ばかりが浮かんでくる。

今にも駆け出して会いに行きたい気持ちを抑えるのがやっと。

今日は、まだ心の準備も出来てないし。

霧生くんに会いに行くんだもん。

寝不足の顔でなんてもちろん。

大事な再会の日に最悪な姿なんて見せたくない。

まだまだ子供だな…。

なんて言われたくないもん。

適当な時間を見計らって尚吾に泣き付かれながらも、急いでホテルに帰った。

シャワーを浴びてベッドに寝転がったのに、霧生くんに会える嬉しさで明け方まで眠れなかった。

朝10時。

完璧にメイクして、入り口の大きな鏡で全身をチェックする。

今日、本当に霧生くんに会えるんだ。

昨日からトクントクンって鳴りっぱなしだった鼓動が、急激な加速度を上げてドクンドクンって鼓動を鳴り響かせる。

微かに震える手で昨日、秀にもらった住所の書いてある紙をバックに入れて駅へ向かった。

霧生くんの住んでいる所は、電車で2時間の所。

今のあたしの住んでいる街より大都市。

これじゃあ全然分からないはず。

もっと早く電車走らないかな?

電車の窓の外を見ながら、気持ちは焦っていた。

それなのに。

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