届カナイ愛ト知ッテイタノニ抑エキレズニ愛シ続ケタ…

「………。」

尚吾君は、何も言わず飛び出して行った。

…そうよね。

私もビックリしたわ。

まさか、尚吾君のおじいさんだったなんて。

尚吾君も、複雑な気持ちだったでしょうね。

でも、私には借金から逃れられるのは、その選択しかなかった。

一生、借金地獄か?

愛人生活か?

愛人生活なんて、じいさんが死ぬまでだから。

中学生の尚吾君には、理解できなかったの。

それから尚吾君の女遊びが激しくなった。

喰っちゃ捨て、喰っちゃ捨て…。

それと同時くらいに、両親が亡くなったの。

父は、過労。

母は、心労で次々に。

それを機に、秀一と尚吾君が警察にお世話になる日々。

いっつも、頭を下げて迎えに行くけど、こんな姉だから説得力なくてね。

逆に、私が怒られちゃって…。

いつの間にか、尚吾君は家に帰らなくなったし。

秀一も、女の子と遊びまわっている。

私の事があって、本気で女の子を好きになれないの。

じいさんも亡くなって数年。

なのに、いまだに私達にはシコリがある。

たまに、思うの。

私は尚吾が好きだったんだって。

今になって気付いて後悔しているの。

笑えるよね…。

手に入れたはずの自由なのに、なくした物が大きかった。

「だから、私は1人で生きていくしかないのよ。」

お姉さんは、笑いながら話してくれた。

すごく、辛い事なのに。

このお姉さん強いな…。

あたしだったら、絶対に耐えられないのに。

「あたしは…………。」

どうしていいか?

なんて言葉をかけていいのか分からない。

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