届カナイ愛ト知ッテイタノニ抑エキレズニ愛シ続ケタ…

67 奇妙な2人暮らし


梅雨前線の最後の抵抗かのように、雨が降り続いている。

エレベーターを降り勇み立って部屋の前まで歩いて行くと、玄関の扉の前で大きく深呼吸した。

行動とは逆に、中身は緊張しすぎでピリピリと胃が痛む。

ギュッと目をつむると、そのまま仁王立ち状態でうつむいて固まっている。

怖くてインターホンすら押せない。

「……何やっている……自分…。」

情けなくてボソリとつぶやいた。

もう一度大きく深呼吸すると、ゆっくりと目をつむった。

「よしっ!!!!」

パチッ!!

っと、何かのスイッチが入ったかのように、目を開けてインターホンに手が伸びた。

ピンポーン…
ピンポーン…

応答なし。

「いないのか…。」

なんて、決まりきった台詞を言ってみたりして。

なんか、ホッとしている自分がいる。

振り返えると、大粒の雨がザーザーと勢いよく降っている。

「この雨の中、帰ってからまた来るのもなぁ…。」

つぶやきながら、玄関にもたれて座り込んだ。

ふと見上げた空は、グレー一色で。

あの日の空を思い出してしまった。

オレンジ色だった空が群青色になり、星が輝いていたあの日…。

こんな風に、玄関の前で霧生くんの帰りを待っていたっけ。

あの時は、霧生くんと冬槻先生の仲を取り持つんだって大張り切りで。

適当な理由つけて、冬槻先生と霧生くんをご飯食べに行かせようとしていて。

冬槻先生から連絡するようにしたんだっけ。

その報告をしたくて、急いで霧生くんの家に行ったらいなくて。

こんな感じで玄関の前で待っていた。

「懐かしいな…。」

ため息混じりにつぶやいた。

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