届カナイ愛ト知ッテイタノニ抑エキレズニ愛シ続ケタ…

75 ギモン


尚吾達のいるビルに来ていた。

ドアを開けると、珍しくいつものメンバーが揃っている。

だけど、ミュウの姿はやっぱりなくて。

「メールしてみたけど、やっぱり返事がこないよ。」

ソファで毛布を頭までスッポリ被って寝ている尚吾に投げかけた。

なのに。

「そうか…。」

ため息まじりに秀が答えた。

ソファの前にしゃがみ込むと、毛布をめくり尚吾の体を抱き起こしてそっと抱きしめた。

尚吾はあたしの体に寄りかかると、寝惚けていた目を覚ました。

「悪いな。」

かすれた声で、ボソリとつぶやいた。

「ちゃんと寝たの?」

「ああ、少しだけ。」

「寝ないとダメだよ。」

心配そうに、尚吾の顔をのぞき込んだ。

「大丈夫だ。」

ギュッと力強くあたしの腕をつかんだのに。

視線は悲しそうにうつむいていた。

その視線が、チクリと胸を痛めた。

「…尚吾。」

これ以上の言葉がでない。

そっとあたしの肩に寄り添うと。

「…男の臭いがする。」

耳元で囁いた。

「え!?」

何をいきなり?

この状況で?

どうしてそんなことを言うの?

お姉さんから、海翔のこと何か聞いてるとか?

もしかして、ミュウが失踪したのに。

あたしだけ男と楽しんでいるって勘違いしているのかな?

「気のせいでしょ?」

フッと鼻で笑うしかなかった。

「お仕置き。」

甘い言葉を耳にかけると同時に、ギュッとあたしの体を抱きしめた。

尚吾がクスリと笑うと、カプッと軽くあたしの首元を噛んだ。

ピリリにも似た感覚が一瞬、尚吾の唇が当てられた首元に走った。

「ちょっと!!」

慌てて尚吾を払いのけようとしたのに。

スッと自分から体を引き離すと。

小さくベーッと舌を出して口元をゆるめた。

だけど、ゆるんだ口元とは反対に。

尚吾の顔は悲しそうなまま。

必死に元気そうに見せているのが、痛いくらい胸の中に伝わってくる。

それを察したかのように。

「エロイ光景だなぁ。」

丘芹が顔に手を当てながら、冗談まじりに言った。
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