Once again…
トラブル 2


「悪い、遅くなった。で、どうなってる?」
 帰社早々、資材部に駆け込んできた小栗さん。
「小栗さん…正直私には何がなんだか分からないんです。誰が何のために、こんな事をやったのかとか…。ずっと考えてるんですけれど…」
「悪意があってやっていることなら、そう簡単に分かるはずもないよ。だけど、それでも悪意しか感じない。俺になのか、君になのか、それはまだ分からないけどな」
「これはどんな理由があったとしても、業務妨害でしかありません。我が社の社員がやった事であれば、それは処分対象となりえます」
 ブルーだったけれど、一緒に解明してくれる人たちがいるだけで、心強かった。
「今回は急いで正規の物をお届けしましょう。藤森君は、すぐに伝票処理をし直して下さい。小栗君は私と一緒に、積み込みの準備をお願いします。ああ、藤森さん、伝票が出来次第、倉庫にお願いします」
「はい! すぐに取り掛かります」
「じゃあ、俺は大型の社用車を回してきます」
「お願いします」
 パソコンに駆け寄ると、すぐに出荷伝票を入力しプリントアウトする。
部長に急いで判を貰うと、つい先日のように経理に走った。
「すみません! 小美濃主任。トラブルがあった商品の出荷をするそうなので、こちらお願いできますでしょうか」
「あら、どうしたの? トラブルって?」
「受注された品物の伝票が改竄されたんです。それで正規のお品物が届かなかったので、今小栗さんと大木部長も動いてくださっています」
「え? 大木部長も動いているの?」
「はい。業務妨害をされた可能性が捨てきれないとのことでしたが…」
「そう、分かったわ。すぐにこちらは、私のほうで処理しておきます。急いで差し上げなさい」
「はい! ありがとうございます、主任」

 伝票を入れた封筒を手に、今度は倉庫へ走る。
大型の社用車…と聞いていたけれど、まさかトラックだとは思わなかった。
ああ、でも普通に考えたら、長さがある分…トラック以外はなかったんだけれども。
いくつもの大きな箱を積み込んで、部長と小栗さんは私から伝票を受け取ると、現場で待ってくれている職人さんの下へ急いで出発していった。
今日はこのトラブルのせいで、午後はまともに業務がこなせていない。
受注伝票もかなりたまっている。
困ったけれど、残業をしないわけにはいかなかった。
すぐに学童に連絡を入れると、19時までなら預かってもらえることになった。
打ち込みは明日でも間に合うけれど、手書き伝票で起票しないわけにはいかなかった。
時間はもうすぐ定時の17時半…。
延長の場合は迎えが必要なので、残り1時間程しかないのを確認すると、急いで伝票の書き込みを始めた。

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