Once again…
気付いた事


「レタスとトマトときゅうり…あとはどうしようかしら…ツナ缶があったしディップにして…。メインは鶏でいいかな。ちょうど塩麹も出来上がってるし」
帰りがけのスーパーで、メモを見ながら買い物を進める。
いつもだったら2人分だからこんなには必要ないけれど、人数が増える分大目に買い込んだ。
こうして自分や翔太以外の人のために食事の準備をするなんて、もうどのくらいぶりになるんだろう。
一緒に暮らしていても、一緒に食事を取ることは少なかった。
別居して、離婚して、それからは私と翔太と2人分以外を作ることがなかった。
離婚経験はあるけれど、こんな気分でこんなに買い込む事なんて初めてかもしれない。

「ただいまー」
「おかえりなさーい」
 大荷物で四苦八苦しながらドアを開けると、翔太が急いで出迎えてくれる。
「おかさん? なんでこんないっぱい買ったの?」
「…小栗さんが来るんですって」
「ほんと? やったぁ、一緒に遊べるかな」
「早く来れたら、そうしてもらえるかもね。それより宿題は?」
「今日は算数プリントと音読だけ。おじちゃんに教えてもらうー」
「何時になるかわからないでしょ? やっちゃってちょうだい?」
「えー」
 渋々と部屋に戻る翔太を見て、少しだけ溜息をついた。
なんてどっぷりと…彼に懐いてしまったんだろう。
こんなんじゃ、今後2人で生きていくのに困るよ…。
そんな意味合いの溜息ではあったけれど。
でもあんまり懐いてしまうと、離れる時に寂しい想いをする事になる。
だからいい加減、小栗さんにも翔太を構うのはやめてもらわなくちゃいけない。
彼だっていつかは、誰かと結婚だってするだろうし。
その時に、私たちが邪魔になってしまってはいけないんだから…。


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