Once again…
新たに進む道


「ちょっと! 翔太がいるでしょ!」
「大丈夫だって。壁で見えてないよ」
「そうゆう問題じゃないのよ!」
「照れ隠しか?」
「違うわよ!」
 ほんと、場所を考えて欲しいと思う。
「…綾子…いつ引っ越してきてもいいか? 元々俺、そんなに荷物もないし。っていうかさ、翔太の学区内で引っ越すってのもありじゃないか?」
「は?」
「え? 僕たちも引っ越すの?」
「それもいいかなって思ってさ」
「学校は? 変わっちゃう?」
「変わらないように、近くに探そうかって思ってる」
「不経済じゃない?」
「まだ暫くは共稼ぎだし、引越しするなら今のうちだろ? 俺、この10年バイト代も含めてずっと貯蓄してたしね。そこそこ貯まってんだよ…余裕で頭金に出来る」
「…は? 頭金?」
「通学コースは変わるかもしれないけどね、ここからもそんなに離れてないところにさ、建売が出てるんだよ。実はこの間内覧会に参加してさ、見てきたばっかりだよ」
「…断わられたらどうするつもりだったの?」
「断わられるつもり、まったくなかったからな」
「……」
 断わられるつもりなかったって…どれだけ自信家なんだろう。
「お前、それだけ自信家なんだって思っただろ」
「……」
「当ったな? ったく…自信なってなかったよ。お前、滅茶苦茶頑なだったし。必ず取り戻すって決めていても、もう無理かもしれないって何度も思った。だから…」
「だから?」
「願いが叶った証として、これからずっと一緒に暮らしていける家を持ちたいって思ったんだ」
「…修平…」
「お前と、翔太と俺、それとこれから生まれてくるだろう子供と一緒に暮らせる家…どうしても俺は持ちたいと思ってるんだ」
「…ここじゃ駄目なの?」
「ここが駄目ってわけじゃない。でも、新たに始めたいって思ってるんだ」
 黙りこんだ私に、縋る様に視線を向ける2人。
「翔太。翔太もそうしたい?」
「僕はおかさんと、おじ…おとさんと一緒ならどこでもいいよ」
「翔太、お前…」
 翔太と目線を合わせるために、修平がフローリングに跪いた。

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