あのこになりたい
「ただいま…」


私が玄関を開けると、キッチンに母が立っていた。



「咲…どうして嘘ついたの。有田くんだっけ?あの子とはいつから知り合いだったの?」


なんでバレてるの…


あの時…

シュンって呼んじゃったんだ!



「シュンは…お兄ちゃんのことで色々考えてくれてただけで…。知り合ったのも最近だし…」


動揺を隠せない私の言葉を遮って、


「じゃあなんで嘘をつくの?二人で嘘ついて…やましいことがないならちゃんと言えるでしょ?最近帰りが遅いのもあの子のせいでしょ!」


母は高い声で叫んだ。



ちゃんと言ったってどうせわかってもらえない。


勉強の邪魔だとか

自分のこともちゃんとできてないのに…とか。


干渉されて束縛されて…

シュンとも会えなくなってたに違いない。



「お兄ちゃんのことが解決したんだから、あの子に会う必要なんてないでしょ。まっすぐ家に帰ってきなさい」


母は自分の言いたいことだけ一方的に告げ、私の方を一切見ない。


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