あのこになりたい
「あなた…いつからそんな口たたくようになったの!!」


母は右手を振り上げた。



叩かれる…!!


私は、顔を背けて目を閉じた。



「やめろ!!」


兄が母の手を掴んだ。



「文康!!」


私は体が更に震えた。



「私…ずっと頑張ってるんだよ。ずっと小さい頃からお母さんの理想に近づけるように」


私は声を振り絞って伝えた。


「お母さんが悪いって言うの?お母さんはいつだって咲のために言ってるのよ。お母さんの言う通りにしてきたから今のあなたがいるんじゃない」


母は泣きながら座りこんだ。



「お母さんの言う通りにずっと頑張ってきた。だけど…」


私は息を吸い込んだ。


「私は私なんだよ。本当は怖がりで勇気もなくて、言えなかっただけ…。事を荒立てないように従ってただけ。自分で決めて失敗するのが怖かっただけ…。それが私なの」


母は大袈裟なほどに泣いていた。


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