烏鎮(うーちん) 上海水郷物語2

おじいちゃん、ありがとう!

人々は二人を祝福して花びらを投げつける。
たくさんの花びらが川面に浮かぶ。
拍手は鳴り止まず歓声が続いている。

橋を渡り終えて二人は楽団員に深々とお辞儀をして
観衆のほうに振り返り手を上げて歓声に答えた。
花火が上がって孔明と静江の結婚式は終わった。

「おかあさん、ごめん。いきなり結婚式だったものだから」

「いいんだよ。中国なんだから。何がおきても驚かない。
おおらかな国柄なんだよ。それに二回目だしお前は。
元気で行っておいで」


半年後、アメリカの静江から母に手紙が来た。

「おとうさん、おかあさん、お元気ですか?
こちらはいたって大ざっぱで、思っていたより
はるかに優雅に暮らしています。

大陸的なところは全く同じなのですね。周囲は
国際色豊かで、たくさんの友人ができました。
子育てで頑張っているお母さんもたくさんいます。

色んなサークルがあってその気になれば日本にいる
時より忙しくなるかもしれません。皆マイペース
人たちばかりなので気を使わないで済むのが一番です。

もう少し落着いたら両国のお母様方をお招き
いたしますので楽しみにして待っていてください。

思い返してみると、ほんとに激動のこの一年でした。
きっかけは全ておじいちゃんの形見が最初でしたね。
遺言どおりに双橋から川に捨てられなかったのにも

きっと二人の執念があの写真と手帳にはこもっていたので
しょう。今静江は最高の幸福をじっと噛み締めています。

おじいちゃんに大感謝しています。
一周忌には帰れませんでしたが。おじいちゃんによろしく。」

                      −完−
< 32 / 32 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

松林B長日記2016

総文字数/3,944

ノンフィクション・実話10ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
2016年(平成28年)京都市右京区くぼ地区と言う小さな地区の 創価学会壮年部、ブロック長さんの赤裸々な心温まる真実の日記物語です。
松林B長日記2015

総文字数/8,991

実用・エッセイ(その他)18ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
創価学会壮年部のブロック長さんの活動日記です。 2015年6月に京都市右京区太秦から常盤に引っ越しました。 そこの小さな地区の物語です。
嵯峨野夢譚(さがのむたん)

総文字数/18,121

ファンタジー152ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
この物語は嵯峨野を訪れた一人の若者が嵯峨野を巡り歩くうちにふと紫式部の歌碑を見つけます。歩き疲れ歌碑の前のベンチでうとうとし始めます。するとその石が若者に語りかけます。 『雲隠れの謎を解いてください。お願いです!でないと私はこの世に戻れません』

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop