短編小説集
私の名前は高野カンナ(たかのかんな)。

カンナという名前は花の名前からつけられた。

お母さんは初産だったこともあり、私を産むのに15時間ほどかかったという。

私が生まれた日、以前お父さんからプレゼントされたという花が咲いたらしい。
その花の名前が“カンナ”。

花言葉は、堅実な未来、永続、情熱、熱い思い、若い恋人同士のように……。

自分の名前が花に由来してることは知っていたけど、花言葉までは知らなかった。
私の結婚が決まった時、お母さんが教えてくれたのだ。

『このお花がお父さんからのプロポーズだったの。でも、お父さんったら花の名前も花言葉も教えてくれないんだもの。お母さん、返事するまでに1年もかかっちゃったわ』

(それはつまり、プロポーズされてから返事をするまでに1年かかったってことだよね……?)

考えただけでもゾッとする。

お父さん、よくその期間待ってられたね? っていうか、普通だったら痺れを切らして返事の催促をするものじゃないだろうか?

『もっとメジャーなお花か、メッセージーカードを添えてくれたら良かったのに』

お母さんは懐かしそうに話しては、くすくすと笑っていた。

『でね、このお花。本当は6月末から7月に咲き始める花なの。それが6月の中旬、カンナの生まれた日に咲いたのよ。分娩室から出てきたら、お父さんがカンナ一輪持って待っててね? お母さん、思わず笑っちゃった』
< 3 / 21 >

この作品をシェア

pagetop