短編小説集
俺が生まれた翌年、隣に住んでる新婚夫婦が七夕に女の子を産んだ。
それが、織姫。

俺たちは1年違いの同日生まれ。
つまりは七夕生まれで、七夕にちなんだ名前がつけられている。

ただし、俺を下の名前で呼ぶのは家族と親戚、織姫の両親のみ、という事実。
因みに、隣のコレも似たようなもの。

浴衣を着て文句たれる織姫に手を引かれ、射的のテントに連れて行かれる。

「ほっしーと姫ちゃんはいつも一緒だなぁ!」

店番をしていたのは田川(たがわ)のおじさん。
近所に住むおじさんで、俺たちのことを良く知る人物。

「別にいつも一緒じゃないですよ……」
「そうだよっ。おじちゃん、せーちゃんが高校生になってからはいつも一緒じゃないよ」

力強く同意されることに微妙に傷つく。
そしてムカつく。

「なんでぃなんでぃ! たかだか学校が変わっただけで、家は隣! こうやって祭りがあればふたり揃って浴衣で来てんだから、それのどこが仲悪いって?」

(別に、仲が悪いとも言ってないけど……)

「今年こそは当てろよな!」

言われて祭り用の射的ライフルを渡された。
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