回廊館の殺人
「いや~、僕も今年は書人になろうと思って計画練ってたんだけど、先を越されちゃったみたいだね。」

「え?書人ってあらかじめきまってるんじゃないんですか?」

残念そうに頭を掻いている佐久間に康之が尋ねる。

「決まってないよ。
犯人が最初から解ってたらおもしろくないだろ?
先に宣言した人がその年の書人になるんだ。」

「…確かに。」

佐久間の回答に康之が納得して頷く。

「あ、殺人って言っても当然振りだから安心してね。」

思い出したように佐久間が付け加える。

「被害者役の人は前もって書人の正体を知ってるんですか?」

宮下が「はいっ!」と手をあげながら佐久間に質問する。

「いいや、書人の正体もシナリオも誰も知らないよ。
合宿中に書人に肩に手を掛けられて『アウト』って言われたらその人はもう被害者なんだ。
発見されるまでその場所を動けないし、推理にも参加できない。
被害者になっちゃったら書人に協力してあげてね。」

「う~ん、それは寂しいですね。」

佐久間の回答に宮下が残念そうな顔をする。

「ま、被害者も被害者で楽しいかもよ?だいたいの真相を知った状態で皆の推理を聞けるわけだしね。」

「う~ん、そうかなぁ?」

宮下はあまり納得していないようだった。
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