追憶の緋月桜


気づいたら、もう遅いの。


「―――緋桜、前へ。」


厳格なる緊張が、触れれば切れてしまいそうな線が張り巡らされているような。


思わず、足がすくむ。




けど、目の前にある桜はそのイロを変えただけで何も変わらない。


ただ、ひとの心を弄ぶようにヒラヒラと舞う。


「継承の刻、」


凜と鈴のなる音が聞こえる。



あぁ、さよならだ。


「神月の血よ、」


桜の前に祈りを捧げるようなカタチの私に桜の花弁が舞い散る。


緋月が淡い光を桜に注いで、私をも照らす。



清らかなる鈴の音が、凜とした空気をつくりだす。


「鬼血よ、震え、奮え、」


何かが、欠けていく。


「緋月のもと、前世の追憶とともに、」


そして何かが、騒ぎ出す。


「甦れ、」



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