深紅の薔薇と漆黒の貴方
2章 闇の王

案内された先は、大きな広間。



おそらく、ここで婚礼の儀が行われるのだろう。


支度されている飾りも料理も、麗蓮の何倍も豪華でうつくしくて、つい地団駄を踏んでしまいそうになる。


「ここでお待ちくださいませ、もうしばらくすれば、陛下がお見えになり婚礼が行われます。」

言うと、そめや侍女たちは皆下がり、広間は私だけになった。



どんなやつに嫁ごうとも、私は己をつらぬいてゆこう。





決意も新たに唇を引き結ぶと、外から声がした。




「陛下のおな~り~!!!」



頭を深く下げると、襖が開き足音がこちらに近づいてくる。



私の調度前で止まった足音の持ち主は、私に向かって言った。






「李玖姫、面をお上げなされませ。」




その丁寧な物言いを訝しく思いつつ顔を上げて、私は言葉を失った。














そこにいたのは、この世の者とも思えぬほど美しい、袴姿の女人だったのだ。














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