アーティクル
 どんなに愛狂しくても、子供は時として、残酷な生き物に変わる。

 律子は学校でイジメの対象とされ、賢司が一人で守っていた。
 学校でもその実態を掴んで指導したが、しかし、その事が逆に、女子たちの気に障ったのだ。

 実に下らない、そう、倫子は思った。

「だから、宮司さん。貴方も一緒に回るのよ」

 別に二人を壊したりはしない。
 倫子はただ、律子を想うそんな賢司の優しさを、感じていたかったのだ。

「でも、そんなことしたら、リンコちゃんまで…」

「大丈夫よ。私はどっかに飛んで行っちゃうんだから」
 賢司の心配を遮り、倫子は脳天気に言い放った。

「今更だけど、初めまして。同じクラスなのに、ちゃんと話をしたことも無かったね。私は国本倫子。庶民よ」
 呆気にとられた律子の右手をとり、握手をした。

「私は宮司律子。お母さんがオランダ人で、私はハーフなの」

「うん、知ってる。取り合えず、私は日本からいなくなるの」
 倫子は笑顔で答えた。
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