アーティクル
 長谷川の狙いは見事に的中した。

 その日の夜に起こったロシア軍の急襲から、見事に部下を救うことが出来たのだ。
 湖の氷は割れ、混乱したロシア軍は、日本軍の容赦のない攻撃に晒された。
 無数のロシア兵が命を落とし、屍を積み上げた。

 その様子を見て、長谷川は虚しさを憶え、そして自問する。
 この氷の大地を奪うことが、そんなに大切なことなのであろうか、と。



 律子は今も暗闇にいた。
 どこまでも、暗闇の世界だ。

 誰も、何も、気付いてくれたりはしない。


 時折、迷い込んだ訪問者たちが、こうして律子の夢の中で、語り掛けるのみであった。



第七話 『アンジェエフスキの苦悩』

完結
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