ハスキーボイスで酔わせて
ライトをつけ高速を走る一台の車。
さっきまでいた温泉街と海に背を向けて、向かうのは東京の自宅だ。
「…ごめんなさい、春樹さん。せっかくの旅行が…」
「気にすんなって。この先いつでも行けるしよ」
運転する春樹さんの横顔はいつもと変わらず優しい。
きっと私に気を使ってくれてるんだ。
要約旅館に着いて落ち着けると思った途端、突然母親からの電話。
何でも突然父親が倒れて病院に運ばれたらしい。
病状は大したことないみたいだけど、
父親は元々血圧高めで普段から血圧を下げる薬を飲んでいる。