君の知らない空

もちろん、すぐにオバチャンに見つかったて聞かれたから説明した。

「あなた、やっぱりドジね」

「無理しないで、ほどほどにね」

二人とも呆れた顔をしていたけど、

「何かあったら言いなさいよ、手伝うから。但し、手が空いてたら。あまり期待しないでよ」

と笑いながら言ってくれた。
言い方はキツイけど、本当は優しいオバチャンなんだ。
敵にさえ回さなければ。


ようやく職場の人たちに話し終えてから、のんびりと仕事に取り掛かろうと受け箱の書類に手を伸ばした。
一日休んだだけなのに、結構仕事が溜まってる。
どれから手を付けるべきかと書類を眺めていたら、優美が隣に立っていた。


「うわっ、いつの間に?」


大袈裟に驚いてみせたら、優美が得意げな笑みを浮かべる。

でも笑みはすぐに消えた。
そっと周りを見回して、顔を伏せる仕草で話し始める。


「オバチャンと話した? 何か言ってなかった?」


聞き逃しそうな小さな声。


「べつに何も?」


と答えたら、腑に落ちないと言いたそうに首を傾げる。


「美香、呼び出されたみたいよ」

「え? 金曜日に?」

「そう、金曜日のお昼休みに、江藤のことで追及されたみたいよ」

相変わらず周りを気にしながら小さな声で優美が言ったのは、何となく予想出来た言葉だった。


顔を上げて覗いて見る。
私の席から計器チームのシマはよく見える。座っている美香の背中、三つ離れた席に座る山本さん。

確かに、山本さんが不機嫌そうにも見える。




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