君の知らない空

「そうそう、殺し屋は綾瀬に頼まれて菅野さんが手配したのか、部下の人たちみたい。菅野さんも見掛けは紳士なのに怖い人ね……そんな人たちをどこから集めるのかしらね」


「お金で雇われた人たちじゃないんですか? お金を渡して依頼したけど、捕まったっていうニュースが以前どこかであったような気がするし……」


と思い出したことを話したら、おばさんは大きく首を振って顔を近づけてくる。


「いやいや、わかんないわよ。普通の人じゃなさそうだから、お金で動くような素人じゃなくて本物の殺し屋かもしれないわよ? 人脈とかありそうだもの」


おばさんの真剣な表情に、ぞくっと背筋が寒くなる。
何か……ドラマとかの観過ぎ?
でも発想力とかは、優美によく似ているかも。


「彼もすごいの、父親の刺客を返り討ちにしてるっていうんだから。負けていないわ……親子の諍いって怖いわね」


彼が菅野に『大方は片付けた……』と言ってたのは、このことだったようだ。自分を狙う殺し屋を返り討ちにしたと。


「あっ、そうだ。ひと月ほど前に霞駅で飛び込みがあったでしょ? あれも彼が関係してるみたいよ、彼の部下が殺し屋を追い詰めたけど、逆にホームから突き落とされたんですって」


そういえば、知花さんが言ってた。
あれは事故じゃなくて、誰かに突き落とされたらしいと。本当だったんだ。


「あ、それ知ってます。電車が遅れたから遅刻して……散々だったんです。まさか、裏にそんなことがあったんですね」


少し大袈裟に驚いてみせたら、おばさんは満足そうに口角を上げた。




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