君の知らない空


ほっとすると同時に、何とも言えない脱力感はいったい何だろう。


「でも美香は無理だね、彼氏手強そうだもん」


優美が一人で納得して頷いている。


ふと思い出したのは、美香の歓迎会の帰りのこと。駅前で見た美香と彼氏の寄り添う姿。


「そうだね、すごく仲良さそうだったから無理だろうね」

「うん、それに美香の彼氏、金持ちっぽかったもん、あの車は普通乗らないでしょ?」

「何て車だっけ? ベンツ?」

「違う、BMWのM5」

「車の種類なんて言われても……色が違うしか分からないよ」

「そのうち分かるって」


得意げな優美の顔。優美の彼氏は車好きだから、自然と覚えたのだろう。


すると目の前のガラス越しを美香が過った。
こっちには気づかなかい様子だったけど、私たちは慌てて顔を伏せた。





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