君の知らない空


リフレッシュコーナーのガラス越しを歩く美香の姿を見つけて、私たちは口を閉ざした。


美香がこちらに気づいてぺこっと会釈する。私たちが笑って返すと、美香は通り過ぎていった。


「それで、美香と食事に行って何を話したの?」


美香の姿が見えなくなった途端に、優美が興味津々で訊ねる。


「ん、仕事のこととか……人間関係?」


私にはそれ以上のことは答えられない。一応美香との約束もあるから、江藤のことを言う訳にはいかない。


「山本さん? やっぱり怖いって? 続けられそうにない感じ?」


「大丈夫そうだよ、山本さんは怖いけど上手くやっていけそうに言ってたから」


「ふぅん、か弱そうに見えて意外と芯は強い子なのかもね」


優美が少しつまらなさそうな顔をした。


「何? 美香に辞めて欲しいの?」


と訊ねると優美は首を振って、


「とんでもない、頑張ってほしいなと思ってるんだから」


と笑う。


するとガラス越しを、計器チームの男性社員らが慌ただしく通り過ぎていく。
その中に、江藤の姿がない。



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